It's K's life.

けーくんの備忘録です。2018年夏からケンブリッジのMBAに行きます。三島由紀夫と海老蔵に似てます。

MBA留学のその後:ニューノーマルへ身を置かんとす

明けましておめでとうございます!

令和元年もあっという間に通り過ぎ、気づけばオリンピックイヤー2020到来。

 

そんなタイミングで、遂に1年半ぶりのフルタイムの勤め先が決まった。

ソフトバンクロボティクスだ。

www.softbankrobotics.com

 

馴染みの無い方のために。ペッパー君を販売している会社だと言えば分かるだろうか。

 

しかし、実は他の会社からもオファーはもらっていた。また、GoogleやアフリカフォーカスのVC/アドバイザリーファームであるDouble Feather Partners(以下DFP)でインターンをさせてもらったりもしている。

 

そんな中でどうしてソフトバンクロボティクスに決めたのか。インターンはどうだったのか。このブログではJICA退職からケンブリッジへのMBA留学について中心に書いてきたが、今後MBA留学をする方のキャリア選択の参考に多少はなるかと思うので、留学関係最後の記事として人生初の転職活動について書くべく筆を取りたい。

 

  1. 就職活動の一般的総論

ヨーロッパ1年制MBAという前提になるが、就職活動は留学してすぐに始まる。本格的な授業が始まるよりも前に、学生同士でお互いのCVをレビューするセッションが提供されたり、コンサル・テック・金融等のMBA生にとってメジャーな就職先の説明会がキャンパスで連日開催される。と思ったらあっという間にフルタイムの就職先の選考も開始し、有名どころだとSamsung, IFC, BCGあたりが確か入学年の9月末、10月中旬くらいを書類提出期限に設定していた。1年制のMBA制からすると、「いやいや留学して早速かよ!勉強追いつかねーよ!」って感じなのだが、これは基本的に各社アメリカの2年制のMBA生を基準に就職活動を設定しているからだろう。アメリカや一部ヨーロッパの2年制のMBA生は、1年目が終わるとほとんどがサマーインターンに行き、そのまま就職先が決まるというケースも多い。そこで青田刈りされる前に選考を進めたい、という意図が企業側にあるのでは無いかと想像する。

 

そしてしばらくして晩秋・冬くらいになると、今度は大手企業のサマーインターンの選考がスタートする。1年制のMBAの場合は本採用の選考とサマーインターンの選考が同時並行で行われるため、なかなかめんどくさいが、多くの学生が両方受けるようにしていると思う。インターンからだと本選考に直接挑むよりも採用される可能性が高かったり、就職前にフィット感を測ることができるため、スムーズに就職できる確度が高まると言われていることに加え、フルタイムの就職先が決まった場合でも、夏に全く異なる経験を積むことで将来的なキャリアの幅を広げられるからだ。そのため、MBA生の中には1ヶ月くらいのインターンを複数受ける人もいる。

 

ちなみにサマーインターンの選考は入学翌年の春頃に大手のものが終わるが、スタートアップのインターン等は結構夏の直前に出てくるもの等も多い。フルタイムの選考に至っては探せば勿論年がら年中やっている。

 

そのため、学生によっては学業のプライオリティを下げて、ずっと就職活動に時間を割いているパターンもある。個人的には、それMBA来る意味ある?って感じもしなくは無いのだが、ポストMBAキャリアというのはある種好きな業界にキャリアチェンジするための一番のゲートウェイであるのは間違い無いので、完全に否定することもできない。

 

  1. Kのケース:タイムフレームの大枠

次に、具体事例として私の就職活動の大まかなタイムフレームについて話そう。

前提として、私の場合、MBA後のDream JobとしてインキュベーターやVC、テック企業を設定していた。その中でも特にGoogleは親会社であるAlphabet傘下に気球からWifiを飛ばすLoonや都市開発を手がけるSidewalk等、テクノロジーを通じて社会を良くする、ワクワクしたイノベーションを多数仕掛けており、アフリカをカバーするヨーロッパオフィスの関係ポジションで働けると面白いように感じていた(※企業によってはドバイ等からアフリカをカバーすることもある)。ただ、ヨーロッパで就職活動を少ししてみて、いきなり現地のそういったポジションに行くのは難しいことも理解した。そもそもヨーロッパでの就労ビザ無しでは採用しない会社も多く、その中でもビザ取得をサポートする企業には、ヨーロッパ中から優秀なMBAがこぞって応募してくるからだ。ビジネスバックグラウンドがなく、ネイティブばりの英語を喋れる訳でもない私にはなかなか厳しい戦いだった。それなら日本でしばらく勤めてみて、慣れてくれば異動、というのが現実的かと考え、ケニアやダブリンのオフィスと並行して、日本のサマーインターンにも応募してみたところ、運良く日本のGoogleインターンとして拾ってもらえた。

他にもいくつかフルタイムやインターンを受けていたが、Googleインターンが決まったところでストップ。折角のMBAなので、その分を学業と、ビジコン、アフリカ関係のコンフィレンス等の課外活動に注力することにした。

そしてGoogleインターンが終わる直前の2019年9月後半くらいから少しずつ就職活動を再開した。この頃には中期的に起業したいという想いが強くなってきていたため、テック系やVCに加えて、ワクワクする事業を手がけているスタートアップもいくつか受けてみた。

同時に、折角色んな経験を積む機会ということもあり、学生時代からの友人である武藤氏がCEOを務めるDFPで、エジプトを中心とした新規市場開拓のインターンをさせてもらえることになった。

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ナイジェリアでDFPCEOの武藤氏、そしてクライアントと。

DFPでのインターンは2020年1月末までだったため、同年2, 3月から働くイメージでゆっくり就職活動を行った。ただ、2019年12月になっても決まらなかったためこの1ヶ月くらいは若干焦り始める。念のためテックの中でもこれまで関心の薄かったSaas系やコンサルも受けようかな、と周りに相談を始めたところで、初めから志望度の高かったテックの外資大手やソフトバンクロボティクスからオファーがもらえてかなりホッとして新年を迎えることができた、というのが正直なところだ。

 

  1. MBAインターンの是非

就職に際する意思決定を振り返る前に、MBAインターンについて、自分の感じたところを、特にこれからヨーロッパの一年制のMBAに行く方にお伝えしたい。MBAインターンは非常に素晴らしい機会であると同時に、失うものも大きいように感じたからだ。

私自身のMBAインターンの経験は貴重なものだった。世界でも類い稀なエクセレントカンパニーであるGoogleでは、社会を革新する組織がどのようなカルチャーで、どんなワクワクするテクノロジーが生まれてきているのか、そういった環境で活躍するにはどのような能力が必要なのか、といったことを学び、自分はどう成長すべきなのか見つめ直し、パワーアップすることができた。また、自身もスタートアップとして爆進しながらアフリカのスタートアップをサポートするDFPでは、スタートアップで働くとはどういうことなのか、成功するスタートアップには何が必要なのか、そしてアフリカがこれからどう変わっていくのか、といったことを知ることができた。

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Googleインターン、噂のTGIFで。

他方、結果として元々希望していたヨーロッパでの現地就職の道を難しくしてしまったようにも感じる。インターンは当然フルタイムのため就職活動のための時間がなかなか取れないし、それぞれ日本とアフリカで行われたため、物理的に距離のあるヨーロッパの企業を調べたり選考を受けるのもなかなか難しくなるためだ。勿論強い意志を持てばできないことはないが、ヨーロッパに滞在している時にMBAの同級生とも支えあいながら行うのに比べると、情報量で言っても精神的に言ってもなかなか厳しい。スタートアップとかだと現地就職の機会も結構ある気がしているのだが、情報やネットワークを駆使する必要が出てくるため、現地にいないと難しいことは否めない。

また、日本で外資系のテックのフルタイム採用の機会を探す場合も、年末の就職活動は実は非常に難しいということも知った。外資テックでは毎年ヘッドカウントと呼ばれる採用枠を決めてから採用を行うのだが、これが大体その年の1月、2月くらいまで決まらないのだ。なので、インターンが終わる前後、就職前年の9月から就職活動を行っても、年内採用のポジションしか見つからないことが多い。面白そうな機会を泣く泣く見逃すということも起こりうる。

さらに、インターンが必ずしも採用直結というわけでもないため、インターン中はかなりのプレッシャーに晒される。周りの多くのMBA生もインターンは本当に全力投球で、深夜や週末まで働く人も多い(※Googleはその点ホワイトです。念のため)。フルタイムで直接採用されていればもう少しゆとりを持って自分のペースでパフォーマンスを発揮できる可能性もあろうが、短い期間で結果を出さないといけないことから焦ってしまい、思ったような働き方・成果をあげられないということもあるように思う。また、そもそも外資系やスタートアップではポジションが消えるということもあるので、パフォーマンスが発揮できても、採用枠が無い、と言ったことがある。私の場合もGoogleは詳細割愛するがインターンを通じたご縁は無く、別途フルタイムの採用を受け直す必要が出てきてしまった。そう考えると、本当に勤めたい職場が直接フルタイムの採用を行なっているなら、最初からそっちにアプライした方が良いケースもあるかもしれない。

勿論、繰り返しになるが、MBAインターンの経験は本当に貴重だと思う。Googleからも、DFPからも、多くのことを学んだ。自分がどういう生き方をしたいのかを考える機会になった。また、自分のキャパを広げることもできた。ただ、デメリットもあることをよく留意した方が良いのは間違いないので、参考になればと思う。

 

  1. Why Softbank Robotics?

そうした中、何故ソフトバンクロボティクスに入社することを決めたのか。

正直めちゃくちゃ迷った。もう一つオファーを同時に出してくれた外資大手テックもなかなか面白いポジションで、クラウドを中心とした幅広いサービスを用いて日本のクライアントのデジタライゼーションを加速することを目指していた。また、グローバルな幹部育成プログラムであるMBA採用の枠になるため、管理職一歩手前のポジションで入り、数年働けばマネージメントも経験できるとされていた。さらに、オファー金額はJICAの頃の給与の倍くらいになる計算。私費でMBAに行くために支払った費用を鑑みれば、魅力が無いと言えば嘘になる金額だ。

 

翻ってソフトバンクロボティクス。日本ではペッパー君のイメージ先行だろうが、実はソフトバンクの出資先も含めて色々と面白いロボットを手がけている。例えば、バク宙もできる人型ロボAtlasを開発するボストンダイナミクスや、ロボットに搭載可能な自動運転技術BrainCorpも出資先。BrainCorpの技術を用いてソフトバンクロボティクスはAI搭載掃除ロボのWhizを開発しており、今回もらったオファーは入社したらWhizの欧州での販売を現地と連携しつつ日本から推進していくことになる予定だ。

 

www.youtube.com

最終的には今後の世界のあり方とキャリア形成について考えて、そして自分の心の声を聞いて覚えるワクワク感から意思決定を行なった。

ここ最近の私の世界観・未来観は、ユヴァル・ノア・ハラリの書くサピエンス全史、そしてホモ・デウスに立脚している。AIを中心とするテクノロジーの発展により、シンギュラリティーに近い状態に世界が達するという予測だ。そこまで行かなくとも、技術は人の力を超えていき、それが社会を規定し、我々ホモ・サピエンスもまた技術に立脚した社会システムの中で規定されていくと想像する。特に、ロボットや宇宙関係のテクノロジーの台頭の中で、先進国のみならず私が中長期的に主戦場にしたい発展途上国でも今後、人の生き方は大きく変わらざるを得なくなるのでは無いかと思う。そうした中で、これから指数関数的に成長していくであろうロボット産業の最先端に飛び込むのは、今だからこそ面白いだろうし、未来を予想してキャリアを築いていくという意味で、将来的にも価値を持つと考えた。

加えて、今自分の頭を離れない中期的なキャリアビジョンである起業という観点からもソフトバンクロボティクスは魅力的だ。ソフトバンクグループのロボット専業部隊として立ち上がった同社はスタートアップカルチャーを持ち、潤沢なキャッシュを用いてスピーディーなスケールを目指している。起業するなら社会を革新するようなサービスを作って、それをニューノーマルにしたいと考えるが、そういった観点でこれまで数々のニューノーマルを日本に作ってきたソフトバンクのスタートアップ部隊はきっとベストオプションに違いない。

それならソフトバンクだよね、何でそんなに悩んだの?と思われる方もいるだろう。正直に言えば金だ。繰り返しになるが、MBAの費用は高い。一年制でも一千万以上かかる。JICAのしがない給与で良くやりくりできた方だと思う。起業するにも金がいる。そしてそろそろ結婚したいがそれもまた金がかかる。スタートアップをいくつか受けつつそちらに強く軸足を置けなかったのも給与がネックだった。相談したMBAの友人からも、金額の開きが大きいならそれを理由に決めても良いのでは、とアドバイスをもらったりもした。それだけ外資大手テックのオファーは魅力的な金額だった。

色んな人に相談したが、そんな中で思い返したのがGoogleで出会ったとある女性役員の方のお言葉。自身もMBAの出身である彼女はとても温かい方で、多忙な時間を縫ってインターンの僕のために30分使ってキャリアコンサルテーションをしてくれた。輝かしいキャリアを歩む彼女に、キャリアを選択する際に給与という軸についてどう考えるのかを尋ねたところ、絶対にお金を判断基準に据えてはいけないと諭された。心の声を聞いて、本当に自分がやりたいことを選んで一所懸命働けば、自然にお金はついてくるし、何より自分が一番生き生きと生きられる、と教えてもらった。

それから数ヶ月して目の前の2つのオファーで揺れる時、彼女の言葉が大きな意味を持った。そう、心の声に耳を傾ければ、圧倒的にソフトバンクロボティクスだった。これからの社会で中長期的に必ずAIやロボットが規定要因となっていく中で、ニューノーマルを創っていくソフトバンクロボティクス、そんな面白い機会に携われることに段違いにワクワクするのだ。答えは決まった。オファーレターにサインし、僕の長かった初めての転職活動は遂に終わりを迎えた。

 

とは言え、だ。これは新しいキャリアの始まりにすぎない。そして、キャリアの意思決定に正解なんてきっと無い。

僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる。

この意思決定が正しいかどうかは、僕自身がどうやって歩むのか、何を成し遂げるのか、結局のところそれ次第なのだ。

 

2020年という節目の年を最高の転機だったと後から振り返られるように、覚悟を持って、全力で頑張ろう。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。