It's K's life.

けーくんの備忘録です。2018年夏からケンブリッジのMBAに行きます。三島由紀夫と海老蔵に似てます。

中国で見た開発の創造と破壊と私のエゴと正義と

中国まで来てまさかのバーガーキング。どうもけーくんです。

西安にいるのですが、気流の影響でほぼほぼ全ての便がストップしています。

上海から西安に入る際も1時間遅刻。中国では飛行機の遅刻が結構当たり前みたいです。

中国最後の夜なので、中華がいいなと思いつつ、空港プライスで高い+マズそうなので無難にハンバーガー選びました。悲しい。

 

今回の中国旅行は約10日間。

上海と西安5日ずつ。

前回中国に行ったのが6年前で、その時は北京。

来年から就職ということで、最後の家族旅行(両親+弟+僕)を兼ねての旅行でしたが、発展を謳歌する中国のイマを見たいという欲求もあり、家族が帰国してからも一人で長居しちゃいました。

 

今回は少しばかり中国に身を置いて感じたこと、考えたことについて、折角なので備忘録として書きます。

※正確な歴史的、地政学的な知識に基づいていない部分も多く、あくまで旅行記として感じたことを書いたものとして捉えてください。

 

◆開発が壊すもの

今回訪れた上海と西安。どちらも中国でも群を抜いて発展を続けている都市に名を連ねています。

上海では400m級の高層ビルがわんさかできていて、まるで小ニューヨーク。そしていたるところで人、人、人。そこかしこが熱気に包まれています。夜はライトアップに照らされて、街中がまるで宝石のようにキラキラ輝いています。

 

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西安はこれまで沿岸地域に比べれば投資が少なかった内陸に位置しますが、今ではバブルの様相。そこかしこに新しい商業施設が建設されるとともに、過去秦、漢、隋、唐といった時代の首都(長安)だったこともあり、博物館や遺跡の整備がどんどん進んでいます。

 

いやー、これはすごい!素直に感心しました。おそらく西安、上海に限らず、中国の都市はこれからもどんどん発展を続けて行き、数年後訪れた時には全く違った姿になっているのだと思います。

 

しかし、すごいのですが、けど、どうしても違和感を拭えませんでした。中国における開発の負の側面にどうしても目が行ってしまった気がします。

上海は確かに美しいですが、そこには秩序がない。僕は東京を中心に日本の都市も好きではないのですが、上海はなおさら好きになれませんでした。とりあえず大きくて綺麗な建物を建てておけ!それが正義なのだ!そんな雰囲気がありました。もちろん古い景観もあり、旧租界の建物を活かした新天地などの地域はお洒落で、なかなか素敵な趣があります。でも、上海らしさ、中国らしさというものはどこにあるのだろうと気になってしまいました。一応都市計画に沿って開発が進んでいるということですし、昔の上海がどのようなものだったのか、僕にはわかりませんが、世界の最先端を行く都市を目指す在り方には疑問を感じてしまいました。

 

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さらに、その発展を享受している人たちのマナーの欠如にも驚きました。信号は無視する(日本人の比じゃありません)、そこら中で唾を吐く(ナイトクルーズの船の中で横の人が僕の足元に吐いてきてびっくりしました)、並んでいる列を横から割って入るのは当たり前、などなど。こういう傾向はもともとは所得水準の高くなかった言わば成金に多く見られるというのが中国でお世話になった父の友人の話で、とりわけ文化大革命を経験した中年が影響を受けてそうなっているということでした。(もちろん立派な方も多いです。今回お世話になった中国の方々は、皆礼儀正しく、日本人より素敵な魅力ある方々でした。)

 

西安においても、新しい施設がバンバンできるのはいいですが、そこに住む人々を強制移住させて、明らかに人工的な遺跡群を無理やりに作る手法や、西安という歴史ある都市を活かさず、近代的な建物が乱立する形での開発が目立ちました。90年代、発展を急ぐ当局が建築家たちから古い街並みを残した上での都市計画が提示されたのを無視し、近代化を推し進めたことに端を発するということです。

 

さらに、格差の固定化も気にかかりました。西安には回(イスラム)教徒が住んでいます。街の文化にも西方からの影響が色濃く見受けられ、通りを曲がり、少し進めばそこはエキゾチックな別世界です。そうした街並み、雰囲気がとても気に入り、滞在中四度も回族街を歩きました。ただ、ここでまた気になったことがありました。とても若い(幼い)店員が多く店先に立っていることです。彼・彼女らは学校が休みだから働いているのか、それとも年がら年中働いているのか、気になったものの英語が通じず聞けませんでした(第二外国語の中国語をもっと勉強しとけばよかったと後悔…)。何となく感じたのは、彼・彼女らが継続的にそこで働いていて、その店を継ぐことが既定路線として決まっている雰囲気でした。

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日本でも昔は、長男は家を継いで、娘は家の手伝いをして、結婚したら相手の家に尽くす、そんな時代がありました。それでも、日本においては経済成長が中国よりは緩やかに進み、かつ平等に人々に訪れました。しかし、中国においては史上例を見ない速度の経済成長・現代化が進み、格差は拡大の一途を辿っています。そうした中で、民族的・宗教的マイノリティに生まれ、小さな店を営む家庭に生まれた場合、一世代では決してその生業からの選択の自由を手に入れられない状況にあるように感じました。おそらく、中国の中産階級と都市部の小さな飲食店経営者では収入に10倍近くの開きがあります。このような格差は、中国の今の開発速度では除去できないのではないかと気にかかりました。

 

◆開発が創るもの

 と、まぁ、中国における発展から感じたネガティブな印象を書き連ねましたが、このような発展は当然中国の人々に恩恵を与えています。巨額の建設投資は内需を刺激し、雇用を生みます。建物や施設の維持管理に際しても当然人手が必要で、多くの職を与えます。そうして生まれた雇用から、多くの家庭が収入を増やし、子供に高等教育を受ける基盤を与え、次代における機会の平等化に近づきます。

実は今回の滞在中3日ほど体調を崩して入院するという憂き目に遭ったのですが、その際に世話をしてくれた通訳の女性はシングルマザーでしたが、子供を女で一人で育てて幼稚園にやるだけの余裕を持ち、秋には母と娘と3人で日本に旅行にくるだけの蓄えがあるという話をしていました。出身は上海でなく、かなり内陸の小さな町から出てきたというのですから、まさに発展の恩恵の受益者です。

さっき格差の被害者としてとりあげた飲食店の方々だって、携帯電話やインターネットにアクセスし、多様なツールで友人とのやりとりを楽しむ喜びを享受しているわけです。もしかしたら、ちょっと貯金をして国内を旅行しているかもしれません。

上海でも西安でも若者は昼はショッピング、夜は街に出てカフェやバーで友人と楽しいひと時を過ごし、シティライフを満喫しています。そのような情景も、開発の明らかな成果だと思います。

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◆先進国のエゴ…?

 中国における開発に関し、正負、双方の側面を書き並べましたが、どうも個人的にはやはりしっくり来ないところが多かったです。むしろ依然訪れた東南アジアの国々の、古くからの街の情景を残した控えめな発展に僕は魅力を感じました。

 けど、それはそれで僕という人間のエゴなのかもしれません。上海・西安どちらに住む人々ももっと豊かな生活をしたい!日本や欧米の水準の暮らしを経験したい!東京やニューヨークのような街に住みたい!そういう想いがあると思います。カンボジアやヴェトナムの人だってそのはずです。それに対して違和感を覚えるのは、日本という先進国に生まれ育った僕のエゴではないかと考えてしまいます。彼らには自らの国、街、生き方に関し、発展のありようを決める権利がある。それを外部から止める権利はない。

 しかし、一方で、そうした旧きを壊す発展形態に疑問を覚えている現地の人がいることも確かです。北京や上海の開発の際、強制的な住民移転を伴う都市整備は多くの反対を市民から招きました。その結果、享受されている所得の向上があるのは事実ですが、逆に奪われている市民の暮らしもあることを忘れてはいけないはずです。

 

 開発はそこに住む人々の幸せの享受を創造することもできるが、同時に暮らしや歴史を壊すこともある。後者をなるべく抑制し、前者の恩恵を最大化する。そんな開発の在り方を模索する必要があると考える良い機会でした。

 

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◆余談その1~上海での教育~

先述の保険会社のお姉さんとは色々話したのですが、その際に賄賂の話が出てきました。腐敗がものすごいっていうのは本やら新聞で読んだことありましたが、実態を普通の市民の方から聞くのは初めて。

彼女の娘さんは今年から幼稚園児。シングルマザーということもあり、幼稚園に預けたいそうなのですが、めちゃくちゃ高いという話。政府運営のものなら安そうなイメージがあるけれど…?と尋ねてみると、幼稚園の入学は希望者が多すぎてちゃんとしたところに入ろうとすると賄賂がいるそうなのです。しかもその額、なんと20000元近くになるという話。日本のサラリーマンの月収くらいはあります。その他にも先生にお歳暮やらお祝い金やらなんやら納めないといけないから教育支出がバカにならないそう。これが幼稚園から始まって大学まで続くとすると相当な額が飛びます。

中国における汚職の数は年間数万件に上るといいますが、氷山の一角でしょう。東南アジアをはじめ他の途上国よりもしかたしたらひどいかもしれません。腐敗との闘いに勝たなければ格差の固定化は避けられない。民主化、法の支配の普及の必要性・重要性を改めて感じました。

 

◆余談その2~西安回族

 西安回族の住むエリアは本当に面白かったです。回族は宗教上の理由(お酒飲めない)から甘いものが好きでそこら中に屋台が出ています。ずっと行列ができているお店もありました。日本では食べたことないようなお菓子も沢山あって、食べ歩きが趣味の僕は幸せでした。しかもお菓子一つ50円もかかりませんからね。(それだけ彼らの生活が苦しそうってことでもありますが…)

 西安からはシルクロードが伸びていて、世界史Loverの僕にはとても魅力的だったのですが、予算と時間の都合上行けなかったのが残念です。次に中国に行くときは甘寧あたりからシルクロードやらウイグル自治州回りたいと思います。

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