お世話になっている皆様
夜分失礼いたします。ヨルダン/
トルコ海外
OJT中のけーくんです。
毎度のごとくここ二週間のレポートをお送りさせていただきます。
******目次******
1)隔週所感
2)隔週のハイライト
3)けーくん新聞社説:今後のシリア情勢はどう転ぶか
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1)隔週所感
A)トルコでの援助機関の存在意義って何なのか
以前からお伝えしているように、私は先週から二週間の出張でトルコに来ています。
帰国後イラクとヨルダンのローン案件を担当する予定のところ、在外事務所でローン事業がどのように動いているのかを学ぶためです。
トルコを訪問するのは初めてであったため、とても楽しみにしていたのですが、実際に来てみてびっくりしました。
首都
アンカラはヨルダンの首都アンマンとは比べ物にならないほど
整備されており、
久しぶりにまともな高層ビルや綺麗な中心街を目にしました。
昨年訪れたヨーロッパ諸国の首都と比較しても、見劣りしないレベルです。むしろ、アテネなんかよりよっぽど発展しています。
ヨルダンでも援助の意義を考えさせられましたが、トルコについても考える必要があります。
それこそ、全て市場原理に任せるのも一つの解ではないかと思います。実際、トルコ政府はPPPをはじめ、民間資本を戦略的に活用しています。
そうした中、トルコ事務所で私は主にローンに関わる会議や、日本企業/国際機関との面談に出席させてもらっています。
一週間程度しかまだ過ごしておりませんが、様々な方の話を聞き、この国を目にする中で、実際にはトルコのような新興国において我々ドナーの存在意義は非常に大きいと感じるようになりました。
トルコには
ボスポラス海峡での大橋や地下鉄道のような、
国の発展の基盤となるようなインフラを整備する大型案件がありま
すが、いずれも民間の融資では決して賄えない規模であり、
ドナーの支援が求められます。
また、外国投資を呼び込むためには、カントリーリスクを軽減するようなバックファイナンスがやはり必要となります。特に、発展から取り残され、歴然とした格差が広がるような地域では、まず公的な整備、そのための国際社会の支援が必要となります。その後で当事国が自ら発展を取り仕切り、民間資本が入ってくるような、そうしたストーリーが必要となると思います。(※ヨルダンでもそうでしたが、トルコにも依然として大きな国内格差があり、開発を要する地域が広がります。)
同時に、
よく言われるようにまだまだ日本の知見を必要とする局面も多いと
感じます。
上述のボスポラスでの各プロジェクトはやはり日本の技術があって
こそですし、
日本と同様の地震国であるトルコで日本の経験から得られた無形の
アイディアを共有することも非常に有用です。それらに対し、
市場と比較してかなりの低利で融資を得られるのは大きな一助とな
ります。
IMFや商社さんとの面談でも、
私たちの支援に対する強い賛同、期待を感じました。
トルコ滞在は残り4日とごくわずかですが、意義を感じる段階を超えて、具体的にどのようなビジョンを持ってローンを活用していくことがわが社で可能なのか、そこまで思考が行き着くように全力で頑張ってまいります。
B)サルトで専門家に張り付いてみて
先々週はサルトという町で観光振興の技プロ専門家と一緒にお仕事させていただきました。
メインの業務は10月第1週に開催されるお祭りのためにアンケートおよび交通誘導方法を考えるというものだったのですが、なかなか楽しくお仕事させていただきました。お祭りの旗で用いる生地を買うために専門家の方と一緒に繊維問屋を訪れたり、お偉いさんの話を聞くためにその秘書さんのお喋りに30分付き合うようなこともありました。
利害関係者が複数に渡り、かつ、皆非常に個性的&アラビーな気の強さで、まったく異なる意見が飛び交う中、地道にそれぞれのところに足を運んでうまく一つにまとめていくプロセスを経験しました。自分たちが本部で作った紙のTORが、現場ではこうやって専門家やコンサルタントさんの手で形にされていくのかと、知ることができました。
ちなみに、サルトではかつてローンで観光振興を目的とした博物館、歩道の整備などもやっており、ローンと技術協力をどのように組み合わせ、効果を高めていくかについても考える良い機会でした。
なお、こちらがサルトの写真です。ヨルダンの中でも非常に素敵な街なので是非皆さんもぺトラに行くついでに立ち寄ってみてください。
2)隔週のハイライト
先々週の華の木曜日(ヨルダンは金曜がお休みなのです)、5年わが社の前身に務めた後、民間に転職、UNDPで現在働く日本人の方と飲ませていただきました。
ゼミの大先輩(しかも後からサークルまで先輩だったと判明)ということもあり、色々とお話いただいたのですが、その際以下のようなやり取りがありました。
大先輩「今回のOJTで一番学んだことは何だい?」
僕 「現場を重視する現場主義を身に着けたこととともに、そこからたどり着いた理想を実現するためには、政治・ビジネス双方を利用するというリアリストな姿勢もまた得たことです。」
すると、大先輩は言います。「現場主義やリアリズムも大事かもしれないが、それだけではまだダメだ。我々国外から支援を行ういわば第3者に求められているのは、現地にない特別な価値をいかに提供できるかということ。そのために、君はどんな価値を発揮できるのか。自分を磨きなさい。自分だけの武器を磨きなさい。君にしか提供できない価値を創造しなさい。」
久しぶりにガツンときました。確かに、僕の頭の中には自分が支援する対象としての受益者や、自分がそのために利用すべき環境、手段のことしかなく、自己という存在の位置づけが不明確でした。
それから自らにずっと問いかけていますが、まだ答えが明確ではありません。「私が提供すべき、磨くべき価値とは何なのか」。帰国までの残り2週間、少しでも磨くべき牙を定めるヒントを探し続けたいと思います。
何度かお伝えしているように、けーくんはとてもスポーティー青年キャラでOJT生活を過ごしています。特に、テニスはほぼ毎週末日本人会でお世話になっていました。そして先々週、最後のテニス会。ついに自分のサービスゲームで勝利をつかむことができました。(ペアの方がめちゃくちゃ上手かったのは内緒です)
ヨルダンに来た時は空振りするわ打ち上げるわで散々でしたが、少しは形になってきました。そして最後の練習後、プチ送別会まで開いていただきました。
「けーくんはKYを直したほうが良い」とか「君の会社は~だ」といったような公私にわたる厳しい意見をいただいたりもしましたが、オジサマ方の愛情を感じた夜でした。そうしたご意見というのは組織の中からだけだとなかなか見えない、いただけない部分があると思います。
色々な場所で得た繋がりを大切にし、謙虚に他者から学ぶ姿勢を忘れないようにしたいと感じた夜でした。
3)けーくん新聞社説:今後のシリア情勢はどう転ぶか
前回の号外に対して反響があったので、引き続き。
今回、私(というか大方のアラビスト)の予測は外れ、
欧米による攻撃はなされず、
国際社会による
化学兵器の管理という方向に動きましたが、
シリアについて今後我々はどのようなシナリオを想定すべきなので
しょうか。
今後のシナリオを考える際、私は3つ重要なポイントがあると思います。
今回米露、そしてシリアが合意した
化学兵器管理ですが、
本当に上手くいくのか、私は甚だ疑問です。アサド政権は従来、
化学兵器など存在しないと主張していましたが、
米欧の攻撃が実際に迫り、ロシアが説得に動くと、
手のひらを返したように
化学兵器の存在を認めました。
しかも廃棄に1年間、
1000億円という費用を必要とする規模だと言います。
外交に嘘はつきものでしょうが、
とんでもない規模の嘘をさらりと告白する。
そんな政権が本当にすべてのカードをオープンにするかと言えば、
非常に懐疑的です。
アメリカも今回の合意の前提として、
化学兵器が本当に国際管理・
廃棄されることを挙げており、
その前提が揺らいだ場合には引き続き武力行使というカードも維持
するとしています。もし一年後、新たな嘘が発覚したり、
管理手続きに対しシリアが非協力的な態度をとったり、
万一
化学兵器が再度用いられた場合には、
再び同様の危機に陥るリスクがあります。
②体制vs反体制派のパワーバランスの変動
現在体制と反体制派の勢力は非常に拮抗しています。
戦闘力もトータルではかなり近いものがあると思います。
そうした中で、
政権側にとって
化学兵器という大量破壊兵器を有していることは大
きなカードだったわけです。それが今回、
失われることになる可能性が出てきました。
もちろん通常兵器で見ても政権側はロシア・イラン・
ヒズボラといった勢力から支援を受けており、
高い戦闘力を有するわけですが、
反体制派のパワーがかなり高まる可能性があります。すなわち、
今回の
化学兵器の使用を受けて過激派の増員、
行動に出ないアメリカに見切りをつけた湾岸諸国やトルコによる自
由シリア軍支援の増大が想定されるのです。
おそらくイラン・
ヒズボラは既に出動可能な戦力のかなりの部分をシリアに送ってお
り、増援余地は少ないはずです。そうすると、
再び反体制派側が勢力圏を拡大する可能性が高まります。
(とはいえ、消耗戦が続く現在の情勢がそこまで動くわけでもないとは思うんですが。)
③ジュネーブ2会合の行方
現在シリア政府はシリア和平に関する国際会議(通称ジュネーブ2)の場で反体制派と停戦を協議すると述べています。
これまで同会合への出席に同意していなかった反体制派国民連合も、自分たちに体制を委ねる用意が政権側にあるのなら出席すると語るなど、役者は揃う見込みです。
ここでどのように政権側から提案がなされるかは、上述の①に対する意思や、今後のシリア情勢全体の成り行きを判断する上での大きな材料となると思います。
シリアの戦火が一刻も早く止むことを祈るばかりです。
というわけで、いよいよ
OJTも残り2週間を切りました。
いやー、早いものですね。
二週間後には帰国しているということもありますので、この辺でこの隔週けーくん新聞も廃刊と致したいと思います。
続きは実際に日本でお会いしてお話しできればと思います。
長らくのご愛顧、ありがとうございました。
OJTラストを皆さんの応援とともに引き続き全力で頑張りますの
で、どうぞよろしくお願いいたします。
けーくん